不倫相手が慰謝料請求を拒否した場合
不倫相手が慰謝料を支払わない場合、いくつかの対処法があります。以下のステップで対応を検討できますが、法的なアドバイスや行動を取る前に、弁護士に相談することを強くお勧めします。
1. 話し合いによる解決の試み
まず、話し合いによって穏便に解決できる可能性を探ります。直接話し合いを行う場合、以下のポイントを意識することが重要です。
- 感情的にならない:相手との話し合いは冷静に進める必要があります。感情的な発言は、交渉をこじらせる原因になるため、注意が必要です。
- 支払い期日の確認:支払いの期日が決まっている場合、改めてその期日を確認し、支払いに応じるよう丁寧に依頼します。
- 支払い方法の提案:相手が金銭的に苦しい場合、分割払いなどの柔軟な支払い方法を提案することも一つの手です。これにより、相手が少しでも支払いに前向きになる可能性があります。
- 第三者を交える:話し合いが難航する場合、共通の知人や、できれば弁護士を交えて進めると、話が進みやすくなります。弁護士がいることで、相手も法的な責任をより意識するようになります。
2. 内容証明郵便による催告
相手が支払いを拒否するか、話し合いが不調に終わった場合、内容証明郵便を使って正式に支払い請求を行います。
- 内容証明とは:内容証明郵便は、郵便局が「いつ」「誰が」「どのような内容の文書を送ったか」を証明する郵便です。法的に効力はありませんが、後々裁判になった際に「支払い請求を行った証拠」として使えるため、非常に有効です。
- 効果:内容証明郵便を送ることで、相手に対して法的なプレッシャーを与え、支払いに応じさせる効果があります。無視できない正式な文書として、相手がそれを受け取ることで行動を促すことが期待されます。
内容証明書とは
内容証明書(内容証明郵便)は、郵便局が「いつ」「誰が」「どのような内容の文書を誰に送ったか」を証明する郵便のことです。この郵便を利用すると、後で「確かにこの文書を送った」という証拠を残すことができます。
内容証明書自体には、相手に法的な強制力はないのですが、特定の内容を相手に伝えたという証拠として、裁判などの法的手続きで非常に重要な役割を果たします。たとえば、慰謝料請求や契約解除など、将来的に法的な問題に発展する可能性のある場合には、内容証明郵便で正式に相手に意思を伝えることが効果的です。
内容証明書の主な特徴
- 証拠としての効力:
- 郵便局が、文書の送付事実とその内容を証明してくれるため、相手に特定の意思を正式に通知したことの証拠として使えます。
- たとえば、慰謝料を請求する場合、内容証明郵便で請求書を送ることで「支払いを求めた事実」を記録に残すことができます。
- 法的な圧力効果:
- 内容証明書は法的な強制力こそありませんが、相手にとっては公式な文書と認識されるため、受け取った相手に「これ以上放置できない」という心理的なプレッシャーを与えることができます。
- 送付事実の証拠:
- 内容証明は、送付した事実を確実に証明するため、後から「そんな手紙はもらっていない」といった主張を相手が行うことを防ぐ効果があります。
内容証明郵便の利用手順
- 書類の作成:
- 内容証明の文書には、相手に伝えたい内容を明確に記載します。たとえば、慰謝料の請求であれば「慰謝料の支払いを求める」といった具体的な要求事項や期日などを記します。
- 文字数や行数に制限があるため、形式に従って作成します。通常、1行20文字以内、1枚につき26行以内で書く必要があります。
- 郵便局での手続き:
- 書類を3通用意します。1通は相手に送付され、1通は郵便局が保管し、もう1通は自分の控えとなります。
- 郵便局の窓口で内容証明郵便として送付する手続きを行います。追加料金が発生しますが、将来の法的な紛争を防ぐための費用としては妥当です。
- 受取証明(オプション):
- 内容証明郵便には、オプションとして「配達証明」をつけることができます。これにより、相手が確かにその文書を受け取ったことを証明する書類が郵便局から送られてきます。特に重要な通知の場合には、この配達証明もつけることをお勧めします。
内容証明の使用例
- 慰謝料請求:不倫や離婚などの問題で、相手に慰謝料を支払ってもらうために、内容証明で正式に請求書を送るケース。
- 契約解除通知:ビジネスや個人間の契約を解除する際に、相手に対して契約解除の意思を正式に伝えるため。
- 督促:未払いの債務や料金を相手に支払わせるための督促として使用。
内容証明郵便のメリット
- 証拠を残せる:文書の送付とその内容が公的に証明されるため、後の法的なトラブルを回避しやすくなります。
- 相手へのプレッシャー:正式な文書として送ることで、相手に行動を促す圧力をかけることができます。
デメリット
- 費用がかかる:普通郵便に比べて追加料金が必要です。特に、内容証明郵便に配達証明を付けると、費用がかさみます。
- 相手を硬化させる可能性:相手によっては、内容証明を受け取ったことで対立が激化するケースもあります。
実際の記載例
例えば、不倫に関する慰謝料請求をする場合の内容証明書の例を示します。
宛先:〇〇(相手の氏名)様
私は、あなたと私の配偶者(〇〇)が〇〇年〇月から〇〇年〇月にかけて不貞行為を行ったことを知りました。これにより、私は精神的苦痛を被り、配偶者との関係が大きく損なわれました。したがって、あなたに対し、慰謝料として〇〇万円を請求します。
つきましては、〇〇年〇月〇日までに、下記の口座にお振込みくださいますようお願い申し上げます。
記
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金口座 口座番号:〇〇〇〇 名義:〇〇
上記の期限までにお支払いいただけない場合は、法的手段を講じざるを得ませんので、ご了承願います。
このように、具体的な請求内容と期限を明記し、相手に対して責任を促します。
3. 調停の申し立て
話し合いや内容証明による催告でも解決しない場合、家庭裁判所に調停を申し立てるという方法があります。
- 調停とは:調停は、裁判官と調停委員が中立の立場で、双方の主張を聞きながら和解を促す手続きです。双方が納得できる解決策を探るため、裁判よりも穏便かつ迅速に解決することができます。
- 費用と時間:調停は裁判よりも費用が低く、比較的短期間で手続きが進む点がメリットです。調停が成立すれば、それは法律上の効力を持ち、相手に慰謝料の支払いを求めることができます。
- 調停不成立の場合:調停が不成立に終わった場合、次の段階として訴訟を検討することになります。
4. 民事訴訟を起こす
調停が不成立、または相手が調停に応じなかった場合、民事訴訟(裁判)を起こして、慰謝料の支払いを強制することが可能です。
- 裁判の流れ:裁判では、慰謝料請求に関する証拠(不倫の証拠や損害を証明する資料)を提出し、裁判官が最終的な判断を下します。
- 不倫の証拠としては、LINEやメールのやり取り、写真、動画などが有力な証拠となります。
- 裁判官は、請求の正当性や慰謝料の金額について判断し、支払い命令を出すことができます。
- 裁判における勝訴と敗訴:裁判に勝てば、相手に支払いを命じる判決が下りますが、相手が支払わない場合、さらに強制執行の手続きを取る必要があります。
5. 強制執行による差し押さえ
裁判で勝訴しても相手が慰謝料を支払わない場合、強制執行という法的手続きを行い、相手の財産や給与を差し押さえることが可能です。
- 強制執行の手続き:裁判所から「強制執行認可」を得た後、相手の財産を差し押さえることができます。給与、預貯金、不動産などが対象になります。
- 相手の財産や収入源を特定する必要があるため、相手の勤務先や銀行口座などの情報を事前に把握しておくことが重要です。
- 費用とリスク:強制執行にも費用がかかるため、回収可能な金額に見合った手続きかどうかを事前に弁護士と相談する必要があります。また、相手に差し押さえ対象となる財産がない場合、実質的な回収ができないリスクもあります。
6. 弁護士の活用
いずれの段階でも、弁護士のサポートがあると、スムーズに進行しやすくなります。
- 慰謝料請求の専門弁護士:不倫慰謝料の請求に精通した弁護士に依頼することで、法的手続きが正確かつ迅速に進められます。弁護士が相手に交渉を行うことで、相手も法的な責任を強く認識し、支払いに応じやすくなります。
- 費用の相場:弁護士費用は、着手金と報酬金がかかります。着手金は初期費用で、報酬金は慰謝料を回収できた際に支払います。費用は案件によりますが、弁護士の経験や事務所によって異なるため、事前に相談しましょう。
7. 時効に注意
不倫慰謝料請求には時効があるため、注意が必要です。
- 不法行為を知ってから3年:慰謝料請求は、相手の不倫を知った時点から3年以内に行う必要があります。3年を過ぎると、法的に請求ができなくなる場合があります。
- 不倫の事実が発生してから20年:不倫が行われた時点から20年経過すると、慰謝料請求権は消滅します。したがって、早めの対応が重要です。